役員報酬を下げて借入返済で補う節税|住宅ローン・社会保険への影響と注意点

法人を持つ一人社長が会社から個人へお金を移す方法は、
役員報酬だけではありません。

過去に会社へ貸し付けたお金がある場合、
その返済を受け取ることで手元現金を確保しながら、
役員報酬を抑えることができます。

この記事では、報酬と借入返済を組み合わせた
お金の移し方の仕組みと、
やる前に知っておくべき注意点を整理します。

目次

役員報酬と借入返済は、性質がまったく違う

役員報酬は「会社が社長に支払う給与」です。
社長側には所得税・住民税・社会保険料がかかり、
会社側には社会保険料の会社負担分が発生します。

一方、役員借入金の返済とは
「社長が過去に会社へ貸したお金を返してもらうこと」です。
自分が貸したお金を返してもらうだけなので、
社長側に税金はかかりません。
社会保険料の対象にもなりません。

この違いを使って、
役員報酬を抑えた分を借入返済で補う、
という資金の流れを設計することができます。

節税効果はどこに出るか?

役員報酬を下げると、まず社会保険料が下がります。
社会保険料は報酬額を基準に計算されるため、
報酬が低いほど個人負担・会社負担ともに減ります。

次に、所得税・住民税が下がります。
役員報酬は給与所得として課税されるため、
報酬が下がれば課税所得が減り、
税負担も軽くなります。

借入返済で受け取る部分には税金がかからないため、
手元に残るお金の割合が増える、
というのが節税の仕組みです。

ただし、給与収入の額面が下がることを忘れずに

ここが最も重要な注意点です。

役員報酬を下げると、
源泉徴収票に記載される給与収入の額が下がります。
借入返済で受け取るお金は収入とは扱われないため、
実際の手元現金とは関係なく、
書類上の「収入」が減ります。

これが問題になるのが、
住宅ローン・マイカーローン・
クレジットカードの審査です。
金融機関が審査で見るのは書類上の給与収入です。
「実際には十分なお金があるのに審査が通らない」
という事態が起きることがあります。

近い将来、個人で大きな借り入れを検討しているなら、
それが終わってから報酬を下げることを
強くお勧めします。
順番を間違えると、手遅れになります。

役員報酬をゼロにすると社会保険から外れる

役員報酬をゼロ円にした場合、
社会保険(健康保険・厚生年金)の被保険者資格を
喪失する扱いになります。

その場合、国民健康保険と国民年金への
切り替えが必要になります。
国保は前年の所得を基に保険料が計算されるため、
所得によっては保険料が高くなることもあります。

また、厚生年金から国民年金に切り替わると、
将来受け取れる年金額にも影響します。
「社保から外れることのデメリット」を
きちんと把握した上で判断することが大切です。

社保を維持したいなら、数万円は残す

社会保険に加入し続けるためには、
役員報酬を完全にゼロにしないことが必要です。

社会保険に加入するための最低報酬額に
法律上の明確な規定はありませんが、
実務上は月数万円程度を残すことで
加入資格を維持するケースが多いです。

ただし、報酬が極端に低い場合は
年金事務所から確認が入ることもあります。
どの程度の報酬を残すかは、
社会保険労務士や税理士に相談しながら
設計することをお勧めします。

報酬の金額変更には時期のルールがある

役員報酬は、原則として
事業年度開始から3か月以内にしか変更できません。
この期間を外れて変更した場合、
増額分や減額分が法人税の計算上
損金(経費)として認められないことがあります。

「来月から下げよう」と思ってもできないケースがあるため、
変更を検討するなら期首から早めに動くことが重要です。
決算期との兼ね合いも含めて、
年度の始まりに税理士と相談して設計するのが基本です。

まず整理すべきこと

この仕組みを検討する前に、
以下の点を整理しておきましょう。

会社への役員貸付金の残高があるか?
なければ借入返済で補う原資がありません。

近い将来、個人でローンを組む予定があるか?
あるなら、先にローンを通してから報酬を下げます。

社会保険を維持するかどうか?
家族の扶養に入れる選択肢も含めて検討します。

報酬を変更できる時期(期首3か月以内)かどうか?
タイミングを外すと翌年度まで待つことになります。

節税の仕組みとしては有効ですが、
個人の状況によって向き不向きがあります。
設計する前に一度税理士に相談してみてください。

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この記事を書いた人

竹岡良晃税理士。売上アップのパーソナルトレーナー税理士。中小企業の経営問題について、傾聴力を駆使して問題解決をサポートする活動を行っている。

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