法人を作ると節税しやすくなる、経費にできるものが増える。
こういった話をよく耳にします。
しかし、これは正確ではありません。
法人化したからといって、経費として認められる範囲が広がるわけではないのです。
この記事では、経費になるかどうかの本当の判断基準と、
法人・個人に関係なく押さえておくべき考え方を整理します。
「法人の支出は経費になりやすい」は誤解
個人事業主の場合、事業用の支出とプライベートの支出が混在しやすく、
どちらか判断が難しい支出が出てきます。
一方、法人の場合は法人口座から支出しているため、
「法人から出したということは業務上必要なはずだ」という論理が確かに成り立つかもしれません。
ここから「法人の支出は何でも経費になる」という誤った理解が生まれます。
これが「法人の方が節税しやすい」という認識の誤りの正体です。
法人であっても個人であっても、経費として認められるかどうかの基準は同じです。
その支出が売上・収益と対応関係があるかどうか、それだけです。
法人税法・所得税法の条文にはっきり書いてある
法人税法にも所得税法にも、経費(損金・必要経費)に関する条文には
「収益に対応する」という文言が含まれています。(法人税法は第22条、所得税法は第27条(事業所得)
会計の基本的な考え方にも、費用収益対応の原則があります。
この対応関係があれば経費として認められます。
対応関係がなければ、法人の支出であっても経費にはなりません。
法人か個人かという形式の問題ではなく、中身の問題です。
判断が難しいのはグレーな支出
「完全に業務に必要」「完全にプライベート」であれば判断は簡単です。
問題は、業務との関係があるようなないような、部分的にあるような支出です。
接待交際費、社内の備品、社用車など、
グレーな支出は多くの場面で出てきます。
こうした支出を経費とするかどうかの判断において大切なのは、
「この支出が自社の収益を上げるためにどう関係しているか」を、
税理士や税務署など第三者に対して、筋道を立てて説明できるかということです。
「このお店での支払いだから経費になる・ならない」ではなく、
「この支出が自社の売上にどう貢献しているか」が問われます。
支払先や支出の種類ではなく、収益との対応関係が唯一の基準です。
経理処理のときが「問い直す」チャンス
収益と費用の対応を意識すると、日々の経理処理の見方が変わります。
領収書・レシートを処理するタイミングで、
「これは本当に売上に貢献しているか?」と問い直すことができます。
なんとなく参加した会合、なんとなく買ってしまった備品、
契約したまま使っていないサービス。
経理処理の場面でこうした問いを立てることが、
無駄な支出を見直すきっかけになります。
必要なものには予算をしっかりつける。
そうでないものは予算を絞る。
このメリハリが、経営の質を高めることにつながります。
「経費になるか?」より「必要か?」を先に考える
経費になるかどうかを考える前に、
「その支出は自社にとって本当に必要か?」を先に問うことをお勧めします。
経費になるから使う、という発想では支出は増え続けます。
必要だから使う、だから経費として説明できる、という順番が本来の姿です。
法人にすれば経費が増えて節税できるというイメージは、
この順番が逆になっているところから生まれています。
正しくは、業務に必要な支出の結果として経費が生まれるのであり、
法人か個人かはその判断に影響しません。
日々の支出を「収益との対応関係があるか?」という視点で見直すことが、
本当の意味での経費管理であり、健全な節税の第一歩です。
