税理士事務所に初めてご相談に来られるお客様との面談は、限られた時間の中でできるだけ深く状況を把握しなければなりません。
しかしながら、以前の竹岡良晃税理士事務所では、面談中に話があちこちに散ってしまい、本来確認すべきことが聞けないまま終わってしまうことがありました。
そこで導入したのが「問診票」です。
医療機関の受付で記入するあの問診票の発想を、初回面談に応用したものです。
この小さな工夫が、面談の質と時間効率を大きく変えました。
同じような課題を感じている経営者・個人事業主の方に向けて、問診票活用のポイントをお伝えします。
導入のきっかけ:「聞くべきことが聞けていない」という悩み
問診票を使い始める前、初回面談で二つの課題を抱えていました。
一つは、会話があちこちに飛んでしまうことです。
お客様の話を丁寧に聞いていると、話題が次々と展開していきます。
それ自体は悪いことではありませんが、気づけば確認したかった基本的な情報(年間売上や現在の会計方法など)を聞けないまま面談が終わっていることがありました。
「あの話、聞き忘れた」と後から気づくことも一度や二度ではありませんでした。
もう一つは、面談時間の問題です。
毎回同じ基本情報を口頭で確認するところから始めるため、本題に入るまでに時間がかかり、肝心な相談内容が深掘りできないまま終わることがありました。
問診票を導入してからは、この二つが解決しました。
お客様には面談前にシートへ記入していただくため、基本情報はすでに把握した状態で会話をスタートできます。
順序立てて会話が進むようになり、限られた時間の中でより深い話ができるようになりました。
竹岡税理士事務所の問診票に入れている項目
実際に当事務所で使用している問診票の項目をご紹介します。
大きく「基本情報」「事業の状況」「税務・会計の現状」「ご要望・お悩み」の4つに分かれています。
冒頭には「分かる範囲、書ける範囲での記入をお願いします」と一言添え、心理的なハードルを下げるようにしています。
基本情報:代表者氏名、会社名・屋号、住所・連絡先、事業内容、事業開始年度。ここは記入いただくだけで把握できる情報です。口頭で確認する手間が省けます。
事業の状況:年間売上、消費税の納税義務の有無、インボイス番号の取得状況。売上規模が分かると、必要なサービスの範囲や顧問料の目安がある程度見えてきます。消費税やインボイスの状況は、面談前に把握しておくと話が早い項目です。
税務・会計の現状:現在の税理士関与の有無、会計処理の方法・使用ソフト、ネットバンキングやExcelの利用状況、LineやGoogleアカウントの有無。これらは当事務所がどのようなサポートをできるかを判断するために必要な情報です。特にオンラインツールへの対応状況は、その後の関与のしやすさに直結します。
ご要望・お悩み:希望する関与度合(毎月関与か申告時のみか)、会計・税務に関して気になること、経営(売上・人事・資金繰り)に関するお悩み、その他税理士への要望、希望する年間顧問料金。
「希望する年間顧問料金」は記入をためらう方もいますが、事前に把握しておくことでお互いにとって的外れな面談を防ぐことができます。
お客様の時間を大切にするための項目として、あえて入れています。
問診票を使う3つのメリット
①「本当の課題」が浮かび上がりやすくなる
お客様が最初に口にする悩みは、必ずしも本当の課題とは限りません。
「節税したい」と言っている方の本当の問題が「売上の不安定さ」だったり、「確定申告を頼みたい」と来られた方が実は「法人化のタイミングを知りたい」だったりすることがあります。
問診票に記入していただく過程で、お客様自身が自分の状況を整理するきっかけになります。
「そういえばこれも聞きたかった」と気づいて書き添えてくださることも多く、面談前から有益な情報が集まります。
ちなみにここでの魔法の言葉は「〇〇と△△の問題、これで全部ですか?他にありませんか?」です。
こうやって聞くと、他にもある場合は、ポロポロと課題が出てきます。
②ヒアリングの漏れがなくなる
問診票がなければ、その場の流れと担当者の記憶に頼ることになります。
問診票があることで、必ず確認すべき項目を事前に設計できます。
面談の流れに関わらず重要な情報は必ず把握できるようになり、「あの確認を忘れた!」がなくなります。
特に従業員のいる方は、質問する内容を平準化することが重要です。
③「ちゃんと準備している」という印象を与える
問診票を用意している事業者はまだ多くありません。
「こちらにご記入いただけますか?」と渡すだけで、丁寧に準備している印象を与えられます。
ペラ1のA4用紙一枚だけですが、あるのと無いのでは全然違います。
初対面の場で専門家としての姿勢を示す効果があり、信頼感の醸成につながります。
使う際の注意点
長すぎると逆効果です。
項目が多すぎると、記入前から「面倒くさい」という印象を与えてしまいます。
A4用紙1枚以内、選択式中心に設計するのがポイントです。
当事務所の問診票も「分かる範囲で」という一言で気軽に書けるようにしています。
問診票は会話の「入口」です。
記入内容をそのまま鵜呑みにせず、「こちらに〇〇と書いていただきましたが、もう少し詳しく聞かせてもらえますか?」と掘り下げることが大切です。
チェックリストをこなすだけでは、温かみのない面談になってしまいます。
個人情報の扱いを明示しましょう。
事業規模や売上など、センシティブな情報が含まれます。「この面談以外では使用しません」という一文を入れるだけで、お客様の安心感が変わります。
定期的に見直すことが大切です。
竹岡税理士事務所でも、問診票の内容は実際の面談を通じて少しずつ改善しています。
「この項目は実際には使っていない」「この質問は別の言い方の方が答えやすい」という気づきを反映し続けることで、精度が上がっていきます。
問診票は「売上アップ」にもつながる
問診票を通じて初回面談の質が上がると、成約率の向上につながります。
お客様の状況をしっかり把握した上でご提案できるため、「この人は自分のことをわかってくれている」という信頼感が生まれやすくなるからです。
また、問診票の記録を蓄積することで「どんなお客様が多いか」「どんな課題を持って来られるか」が見えてきます。
これはサービス改善やターゲット設定にも活用できる資産になります。
問診票は小さなツールですが、使い方次第で面談の質・成約率・顧客満足度のすべてに影響します。
「まず10項目だけ」というシンプルなものから試してみることをお勧めします。
完璧なものを最初から目指すより、使いながら改善する方が、自社に合ったものに育っていきます。
ぜひ皆さんの会社やお店でも「問診票」を活用されてみてはいかがでしょうか?
