田舎では、お父さんが持つ土地に息子が家を建てるというケースをよく見かけます。
戸建てを購入するといっても、建物の金額は近年上がっているものの、やはり土地の代金の方が高いです。その土地の代金を支払わずに済むというのであれば、それを利用しない手はありません。
都市部でも、親の土地を無償(タダ)で借りて家を建てるというケースは珍しくありません。
こうした状況は、日常生活では何の問題もなく続きます。
しかし、その土地の持ち主(底地の所有者)が亡くなったとき、相続の問題が一気に表面化します。
相続のセオリー:不動産は単独所有・底地と建物の所有者は揃える
相続における不動産の大原則があります。
一つの不動産は、単独の所有者にすること。そして、土地(底地)と建物の所有者は同じにすること。
この原則に照らせば、お父さんの土地の上に息子が家を建てている場合、お父さんが亡くなったときにその底地を誰が相続するかは自明です。
その土地の上に家を建てて住んでいる息子が相続するのが、もっとも合理的であり望ましいかたちです。
ところが現実には、この原則が守られないまま話が進んでしまうことが多くあります。
「とりあえず共有で」が最初の落とし穴
お父さんが亡くなったとき、相続人が複数いると、その土地をどう分けるかという問題が生じます。
土地は物理的に切れないため、とりあえず家族間で共有名義にしておこう、という判断になりがちです。
一次相続(お父さんが亡くなったとき)の段階では、共有する兄弟同士の関係はまだ近く、大きな問題にならないことが多いです。
しかし、時間が経つと話が変わってきます。
二次相続以降、持分はどんどん分散していく
兄弟の一人が亡くなると、その持分は子ども(甥・姪)へと相続されます。
これが二次相続です。
こうなると、底地を共有しているのは兄弟の子どもたち、つまりいとこ同士になります。
兄弟の数が多ければ多いほど、またそれぞれの子どもの数が多ければ多いほど、共有者の数は増えていきます。
三次相続、四次相続と代が下がるにつれて、共有者はさらに増え、関係性は薄くなります。
最終的には、互いに面識もほとんどない人たちが、同じ土地の持分を少しずつ持ち合っている状態になります。
共有者が増えると、土地が動かせなくなる
共有名義の土地を売却したり、一人の名義に集約したりするには、共有者全員の同意が必要です。
しかし共有者の数が増えれば増えるほど、全員の合意を得ることは難しくなります。
一人でも「反対」「連絡がつかない」「どこにいるか分からない」という状況になれば、話は止まってしまいます。
こうして生まれるのが、近年問題になっている「相続未登記の土地」です。
誰のものかは分かっているはずなのに、登記も更新されず、売ることも使うこともできない土地が全国に増え続けています。持分を所有する人が100人以上いるというケースも実際に存在します。
この問題の出発点は、多くの場合、最初の一次相続で「とりあえず共有で」という判断をしたことにあります。
不動産と現金が混在するとさらに複雑になる
相続財産が不動産と現金の両方からなる場合、分け方をめぐって意見が割れやすくなります。
「不動産で受け取る」か「現金で受け取る」かという選択だけでなく、不動産の評価額と時価が大きくかけ離れているケースも多く、「この土地は相続税評価では2,000万円だが、実際に売ればもっと高い(あるいは低い)」という問題が起きます。
また、売却した場合に発生する所得税や住民税、諸費用などを考慮すると、公平な分け方の正解は一つではありません。
こうした複雑さが、決定を先送りにする理由にもなります。
「また話し合おう」が続くうちに年月が経ち、共有のまま相続が繰り返されていき、そのたびに問題は大きくなります。
一番大切なのは「一次相続のときに決める」こと
相続財産に不動産が含まれている場合、一次相続のタイミングが最も重要です。
このときに適切な形で整理できれば、その後の問題の多くを防ぐことができます。
底地の所有者が亡くなったとき、その土地の上に建物を所有している相続人が底地を引き継ぐ。
これが、長期的な問題を生まないためのもっとも合理的な選択です。
他の相続人への配慮が必要であれば、土地の評価額に見合った現金や別の資産を充てる形で調整する方法もあります。
例えば、土地は兄が取得する代わりに、弟へ金銭を渡すという。このような方法を代償分割といいます。
弟に渡す金銭をいくらにすれば兄弟間のバランスが取れるのか?という問題はありますが、兄単独名義の土地になりますので、兄弟間での共有名義となる問題は回避できます。
全員が納得できる落とし所を見つけることが難しい場合は、税理士や弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。
「今は揉めていないから大丈夫」という状態でも、次の世代、さらにその次の世代に問題が先送りされているだけかもしれません。
土地の持ち主(父)が元気なうちに、土地は誰、預金は誰、株は誰というように、各相続財産について、誰がどの財産を取得するというのを、あらかじめ被相続人ご本人(父)を中心に、家族間で意見を合わせておくというのが非常に大切です。
お盆やお正月など、親族が集まる機会に、このような話を定期的に持っておくというのが、今後の相続争いを避けるために重要です。
