税法論文で金額の多寡(多い少ない)を論じるのは難しいです。適正な時価、著しく低い金額なども同じです。今回はなぜ金額の多寡について論文で書くのかが難しいのかを書こうと思います。
判例の内容がその事件に限定される
納税者と課税庁との間で主張する金額が異なるため、税務調査から国税不服審判を経て、地裁、高裁、そして最高裁へと争われています。
各種税法で様々な金額について争われてきました。判例や文献の数については沢山ありますので、一見論文として書けそうな気もします。
ではなぜ金額の多寡で税法論文を書くのが難しいのでしょうか?
その理由は、判例の内容がその事件に限定されるからです。
税務事件は同じ状況の事件が2つとありません。その判例や裁判例は「今回の事件については、××の金額は○○円が妥当である。」と判断したに過ぎません。似たような事件でも、裁判所が全く異なる判断をする場合もあります。
金額の多寡は水掛論になってしまう
私の指導教授もゼミで述べていましたが、結局金額の多寡について書こうと思うと水掛論になってしまう、論文テーマとしてお勧めしない、とのことでした。
税法論文は基本的には条文の文言の解釈をめぐって意見が対立する事件を題材に書きます。
ですので、金額の多寡について書くということは、この本来の条文の文言の解釈から少し離れた場所の話となり、結果として、金額だけの水掛論の話になりがちになってしまうという事です。
「○○円が正しい」「いや、××円が妥当だ」だけでは論文は書けませんという話でした。