10月になったばかりで、まだまだ確定申告シーズン時期まで時間がありますが、私の事務所でも確定申告の依頼や問い合わせがぽつぽつと来ています。
近年は会社員で副業をされている方の問い合わせが増えています。
今回は会社員の副業の申告についての話を書きます。
副業=雑所得が基本
会社員で副業の収入がある場合、基本的にはその副業の所得区分は雑所得となります。
一部で副業の所得を事業所得に区分したいという方がいます。雑所得よりも事業所得の区分にすれば、青色申告の特別控除や損益通算の恩恵を受けられるからです。
副業が雑所得か?事業所得か?の線引きは曖昧です。
国税庁が2022年に年間収入が300万円を超えない場合は、雑所得とするという改正をしようとしました。
ところが、一概に収入金額だけで判断できないという反対意見もありました。
結果として、現在は収入300万円以下であっても、帳簿書類を保存していれば、事業所得として取り扱ってもよいということになっています。
では、帳簿書類を保存さえしていれば、収入300万円以下であっても事業所得として取り扱ってよいか?というと、そういうことではありません。
あくまでも帳簿書類の保存は事業所得の重要な要件の1つですが、それ以外の内容も重要です。
副業の所得と本業の所得とのバランスがどうか?(どのようにして生計を立てているのか?)
営利性はあるか?(毎年赤字の場合は節税目的のための副業と判断される)
事業所得として申告したが雑所得と判断された裁判例
少し前に会社員が副業で社労士業務を事業所得として申告、事業所得の赤字を会社員の給与所得と損益通算していたが、税務署が否認。裁判でも社労士業務は事業所得ではなく雑所得とする(損益通算できない)判決がありました。
「社労士業務が5年連続で赤字」という部分が判断の1つのポイントとなった裁判例です。
開業初年度の赤字ならともかく、5年連続の赤字であれば、営利性は無く、損益通算するための節税を目的としたもので、雑所得と判断されても仕方がないケースです。
赤字の所得は損益通算しない税務署もある
この話は事業所得とは別の農業所得の話にはなりますが、赤字の農業所得は他の所得と通算しないという取り扱いをしている税務署があるようです。
農業の場合は、いろんなしがらみがあって農業を辞めたくても辞められないという問題が絡んできます。ですので、難しい部分もあるのですが、とある税務署ではそのような取り扱いをしているとのことです。
雑所得のメリット
雑所得のメリットは何といっても「計算が簡単!」ということではないでしょうか?
特に経費については、事業所得のように科目別に分ける必要がありません。経費かどうか?だけの判断で済みます。
さきほどの国税庁300万円基準を一つの目安として、年間収入が300万円以下であれば、雑所得として申告。300万円を超えてくるタイミングで開業届を出して事業所得へ切り替えるというのが、一番良いのではないでしょうか?
事業所得は手間がかかる
事業所得として扱うのであれば、最初の開業届出やその後の帳簿作成が意外とネックになってきます。
特に「今まで経理の仕事をしたことがない」「お金の計算は苦手」というような方にとっては、かなり大変な作業と感じる方も多いと思います。
freeeやマネーフォワードなどクラウド会計ソフトがあれば、すべて自動でやってくれます!というような広告を見かけます。実際にやってみれば分かりますが、特に最初の設定が大変です。
また、途中でトラブルが発生したときに、どう修正するか?というのは、簿記の知識がないと対応できないというケースもあります。
雑所得から事業所得へ切り替えるタイミングで、初年度だけでも良いので、税理士や税務署に相談するのが良いと思います。