事業の開業資金を親族から借りる場合は、必ず借用書を作成して、預金口座を経由して資金移動してください。そうしないと相続時に税務署から贈与と判断される可能性があります。今回は事業の開業資金を親族から借りる際の注意点について書きます。
親族から開業資金を借りること自体には問題はない
親族(主に親)が開業を応援してくれるということで、親族から開業資金を借りるということ自体には特に問題ありません。問題は必ず借りた資金を返す意思があるか?つまり、贈与ではないということが重要です。
金融機関や政策公庫など第三者から資金を借りる場合は、このような贈与の問題は考える必要がありませんが、親族間での資金のやり取りについては、必ず借用書を作成しておきましょう。
借用書の書式は特に決まっていませんので、手書き、Wordなどで作成、ネットからひな形をダウンロードする、何でも構いません。借用書はお金の貸し借りの証拠の1つとなりますので、無いよりもあった方が絶対に良いです。
特に親御さんから資金を借りる場合は、口頭でのやり取りだけで終わるケースが多いので、借用書を忘れずに作成してください。
必ず預金口座を経由して資金のやり取りをする
そして、資金移動についても手渡しではなく、必ず預金口座を経由して資金のやり取りをしてください。預金口座を経由すれば、お互いの口座通帳に誰から誰へ何円の資金が移動したか?の形跡が残ります。現金手渡しの場合だと形跡が一切残りません。
開業に際しての何かの支払について、親御さんが直接ご自身の口座から支払ってあげたいというケースもあると思いますが、その際は必ず一旦はご本人の預金口座を経由して、ご本人が直接その支払をしてください。
利息の計算と毎月返済する
あと注意して欲しいのが利息の計算です。金融機関などから借入をすれば必ず利息が発生しますので、たとえ親族間であったとしても利息は計算してください。利率は第三者から借りるよりも少し低い利率で構いません。
そして、返済を毎月おこなってください。毎月でなくても数か月に1回でも問題ありませんが、数か月に1度だと返済の振込を忘れやすくなりますので、できれば毎月返済をおすすめします。
ネットなどで借入返済表を作成し、その返済表に沿って返済していくのが一番よいです。
万が一、返済表の計画通りに返済できない場合は、毎月の返済額を下げるなどして、くれぐれも返済されない期間を作らないようにしてください。税務署が未返済部分が贈与に該当するという判定をする可能性もあるからです。
借用書などは他の相続人に対しても効果がある
借用書の作成や利息計算は、この贈与の問題に加えて、相続時の他の相続人に対しても、「このお金は親から借りたお金であって、決して個人的に贈与してもらったお金ではない」と主張する証拠にもなります。
特定の相続人だけが資金援助を受けたとなると、それを不満に思う他の相続人が出る可能性もあります。ですので、やはり借用書作成や利息計算、毎月返済の実施は重要です。
親族間、特に親子間で借用書などを用意したり、利息を計算したりするのはちょっと面倒・・・・と思われる方も多いと思いますが、税務署から贈与と判定されないためにも、くれぐれも注意してください。