私のブログ内でよく読まれている「売上と仕入の相殺は厳禁です」という記事がありますが、それに関連した話で、クレジット決済の入金について、手数料差引後の入金額だけ処理している・・・・という方はいませんか?結果として消費税額がズレる可能性があります。今回はクレジット決済の入金処理についての注意点と処理方法について書きます。
手数料を毎回処理するのが本来の方法ですが・・・・
10,000円の売上、クレジット手数料300円、差引9,700円であれば、
クレジット手数料300 / 売上10,000
普通預金9,700
が本来の仕訳ですが、この仕訳をクレジットの売上振込の都度入力するのは、とても大変です。最近の○○Payなどは月1で入金されるクレジットカードと異なり、売上の数日後にどんどん振り込まれます。
簡便的に入金額を売上として処理する方法と取ると、
普通預金9,700 / 売上9,700
となります。売上10,000とクレジット手数料300を相殺した形になります。
相殺しただけなのに問題なさそうに見えますが・・・・・
消費税額がズレる
このクレジット手数料については、非課税仕入の場合があります。詳しくはクレジットカード会社からの通知に記載されていますので、よく確認してください(中には課税仕入のケースもありますが)。
詳しい計算などは省略しますが、結局クレジット手数料が非課税仕入の場合、相殺した仕訳で処理してしまうと、このクレジット手数料の総額の10%部分=消費税相当額が本来納付すべき消費税からもれてしまいます。
クレジット手数料は3%程度ですが、最近のキャッシュレス時代では小売店の売上はほぼ全てがカード決済というお店も少なくありません。売上が数億円の場合はクレジット手数料が数百万となり、その10%部分=消費税が数十万単位でズレる可能性があるということです。
簡易課税と本則課税の選択誤りの可能性も
消費税額が過少になることに加えて、本来は年間課税売上が5,000万円以上で消費税の計算で本則課税しか適用できないのに、クレジット手数料を相殺した処理をすれば年間課税売上が5,000万円未満となり簡易課税を選択したというケースも考えられます。
消費税は簡易課税と本則課税で税額に大きな差が生じるケースがほとんどです。
特に年間課税売上が5,000万円周辺の会社は特にこのクレジット手数料の処理に注意が必要です。
本来の正しい処理ではないが・・・・
では、毎回入金の度にクレジット手数料を処理するのは大変、でも手数料相殺後の入金処理だけでも問題があるとすると、どのように処理したらいいのでしょうか?
このやり方は本来の正しい処理ではありませんが、
期中の入金処理は相殺後の入金額で処理、決算時に年間クレジット手数料を一気に計上するという方法です。
注意すべき点は、クレジット手数料は非課税仕入、売上は課税売上で処理するということです。
クレジット手数料(非課税仕入)/ 売上(課税売上)
これで、上記の消費税についての問題点は解決します。ただし、以下のような問題点も残ります。
①クレジット会社によって手数料%が異なり、正確な割り戻し計算ではない。
簡便的な計算処理をしている以上、正確性には欠けます。
②毎月の売上の数字がクレジット手数料相当額だけ低くなる
クレジット手数料部分は期中では処理していないので、期中は正確な売上金額が計上されません。
③消費税の納税予測金額が過少になる
売上がクレジット手数料相当額だけ過少になるので、その過少売上を基礎に計算した消費税の納税予測も過少になってしまいます。
簡便的に処理する以上は少し問題が発生してしまうのは、やむを得ないという感じでしょうか?かと言って、入金の都度、本来の処理を毎回実施するもの大変手間が掛かります。
本来の処理でするのか?簡便的に決算時に処理するのか?会社やお店の経理状況によって対応方法を変えるというのが、現実的なところではないでしょうか?(折衷案として月末ごとにこの処理をするという方法もあります)