税理士顧問月額1万円を切る広告がネットに出てきました。予想通り税理士の資格を持っていない会社でした。税理士報酬に限らず安いのには必ず理由があります。赤字の仕事を受ける会社なんて絶対に存在しません。今回はこの激安顧問料の会社の話を書きます。
ネットに激安顧問料を謳う広告
この激安顧問料の広告はたまたまネットで見つけました。実際にホームページを見てみると、
ホームページはキレイに作られており、耳障りの良いワードが並んでいたが、
すぐに「提携税理士」のNGワードを発見、完全にアウトです。
アウトと言うのは、詳しくは「記帳代行は税理士法違反か?」の記事に書いていますが、この提携税理士という言葉が大問題なのです。
何度も書きますが、なぜ自社に税理士がいるのに提携税理士というワードが出てくるのか?
代表者自身が税理士なら社外の他の税理士と提携する必要はありません。
提携税理士のワードを記載するということは、(代表者自身も含めて)自社には税理士資格を持つ人間が居ませんと言っているのと同じです。
私には「当社は税理士資格の無い会社ですが、税理士業務をしています」とホームページに堂々と書いているのと同じに見えますので、この提携税理士のワードを見ると、笑ってしまいます。
ざっとホームページ全体を見ましたが、自社の税理士の紹介が一切ありませんでした。(自社に税理士が居ないから当然ですが)
この会社は提携税理士も募集していましたが、内容によっては名義貸しに該当します。名義貸しは税理士法違反ですので、最悪の場合は税理士資格を剥奪されます。普通の税理士なら怖くていくら好待遇でも応募はしません。
この会社のホームページを見ていて思ったのは、「そもそも、この会社は税理士法を理解していないのでは?」ということです。
勢いのある急成長してる感じの会社でしたが、税理士法関係の調査を一切せずに参入してきたように見えました。税理士業界について少し調べたら、この税理士法の問題はすぐに出てきます。
調べてなかったのか? そもそも税理士法に引っかかってないと思っているのか? あるいは、少々違反しても問題無いと思っているのか? いずれにせよ、大々的に広告を出している会社なので国税庁に見つかるのも時間の問題です。
激安顧問料のカラクリ
冒頭にも書きましたが、激安顧問料を設定できるのには必ず理由があります。普通の税理士事務所は月額1万円を切る顧問料なんて、まず契約しません。赤字になるからです。(新規開業税理士が生活費を稼ぐために、やむを得ず激安でも仕事を受けるケースはありますが、あくまでも開業当初期間に限定されます。)
この会社のホームページには、こんな感じで自社のアピールをしていました。
質問はチャボットで24時間、365日受け付けています!夜間でも休日でもすぐに質問に回答します!
質問はチャボットで答えるらしいです。そりゃチャボットなら24時間365日回答可能ですね。人件費も掛かりませんし、夜中や休日に質問に対応させてもチャボットは文句一つ言いません。
発想は素晴らしいと思いますが、チャボットで調べられる質問なんて程度が知れてます。ちなみに国税庁ホームページでもチャボットがありますが、こちらは無料です。
チャボットが回答できる質問は、ネットを見ればすぐに分かる程度です。答えが決まっている一般的な質問だけです。
具体的な個別案件をチャボットが答えてくれるのなら、税理士はとっくに絶滅しています。
チャボット(AI)の情報収集能力は生身の税理士を超えるが、「個別案件を考える」という能力は、生身の税理士には絶対に勝てません。答えのない、正解のない世界を考えられるのは生身の税理士だけです。チャボットが納税者の気持ちや想いを理解して助言できる訳がありません。
AIは「1か0」「白か黒」「有か無」しか判断できません。AIはグレー部分は判断できないので、エラー項目と回答するしかありません。
そんなグレー部分を判断できないチャボットと単に金額だけで生身の税理士が比較されること自体が、税理士の一人として情けないと思います。
激安顧問料会社からも見習うべきところもある
この激安顧問料会社は税理士に違反していますが、低料金でも利益を出す仕組みのアイディアは見習うべきところだと思います。
どうやったら売上が上がるか? どうやったら利益が出るか? そのための広告をどのネット媒体に載せるか?
ここからは私の想像ですが、この会社の顧客の出入りは相当多いと思います。激安なのでサービスが悪く解約する顧客も多いが、激安なので新たに契約する顧客も多いはずです。
そして、ネット上での広告ですので、ターゲットとなる顧客の範囲は日本全国です。日本全国のお店や会社がターゲットなら、いくら解約が増えても新規顧客が尽きることはありません。
このように解約と新規契約を繰り返して、売上を確保することで会社の経営を維持しているのだと思います。ひとつのビジネスモデルだと思います。
1件解約が出ても、すぐに2件の新規契約を取ってくればいい。
肉を切らせて骨を断つ作戦といったところでしょうか?
また、会計資料を全てデータでやり取りする仕組みを確立している点も素晴らしいと思います。
私の所属する事務所も含めてですが、従来型の税理士事務所は依然としてペーパーレスが進んでいません。未だに電話、FAX、郵便を使っているのが現状です。
今回見た会社は少し先の新しい税理士事務所のかたちを見せてくれた気がします(税理士法違反をしている点は決して看過できませんが)。