先日令和3年の税理士試験合格発表があり、受験生に合否通知が届いています。私は今年の令和3年の税理士試験は受験していませんが、令和3年の国税徴収法の本試験問題について、私なりに思う事を書こうと思います。
なお、コメントについてはちょっと上から目線で偉そうな事も書いていますが、「国税徴収法の(過年度の)合格者は、これぐらいの感覚で本試験を見ている」ということを参考にしてください。
令和3年国税徴収法本試験問題の各問題に対するコメント
第一問
問一
裁量解除のベタ書きについては、別の記事「令和3年国税徴収法について」に詳細を記載しています。指示不足の問題だが、徴収法と通則法を区分して書けばいいのでは?という話です。
問二
⑴は暴力団に関する改正論点です。各種専門学校の法改正対策で対応していると思いますし、税大講本の58ページにとがっつり書いています。7日、21日の日にちまでは書けなくても、暴力団の調査で売却決定まで日数が掛かる旨さえ理解できていれば、部分的にでも解答は可能な問題だと思います。
⑵は売却決定の取消しのベタ書きですね。テキストの解説にも載っているので、特に難しくありません。
第二問
問1
⑴換価執行決定の趣旨は、近年の改正で換価執行決定の規定が出来た理由さえ理解していれば書けます。(私が合格した年の専門学校の講義でも講師が説明してました。)
⑵も換価執行決定手続の規定をしっかり理解、暗記していれば問題なく解答できます。
問2
まず出ないとされていた計算問題ですが、専門学校の教材さえしっかり抑えていれば解ける問題だと思います。
と言うのも、私が試しにメモ書きで線表を書いたら、タックの解答速報の解答と全く同じ内容になりました。私は令和2年8月本試験以降、計算問題なんて全く解いていません、配当計算の線表を書くのは、約1年4カ月ぶりです。そんな私でさえ、配当金額の計算は合うのですから、現役受験生の上位10%の人は、まず計算問題は間違わないと思います。
唯一間違うとしたら、滞納処分費ぐらいでしょうか?
D年金事務所の財産鑑定料は、X税務署長の差押えによる換価には何の関係もありませんので、「直接の」滞納処分費には該当しないと考えられます。
ぐるぐるのもっと難しいパターンに比べれば、今回の本試験の計算問題のぐるぐるはそれほど難しい問題とは言えないと思います。繰り返しになりますが、上位10%の受験生は(滞納処分費を除き)まず間違わない問題だと思います。
ぐるぐるに気付かない時点で即死レベルです。
即死レベルと書いた理由は、仮に計算問題を落とした場合、今回の本試験の問題では、他の問題で点数を稼いだとしても、合格ラインの上位10数%の集団には追い付けないからです。(上位10%集団は理論でもしっかり点数を取ってくるので、理論で挽回は不可能です。)
改正の少ない国税徴収法では、改正があれば数年以内にほぼ出題されますので、改正未出題は特に抑えておかないといけません。今回は暴力団、換価執行決定についてでした。
改正するということは従来の規定に問題があったからです。ですので、改正の趣旨もセットで抑える必要があります。今回は換価執行決定の趣旨が問われました。
テキストの解説に書いてたらAランクです。「参考部分なので」「模試で出なかったから」「講師が説明してなかったから」とか関係ないです。(他の国税の科目に比べて)大した量ではないので、趣旨や改正項目は全部抑えましょう。
時間配分について
今回の令和3年の本試験問題での時間配分について考えてみました。実際に問題を解いていませんので、かなり大雑把な感じになりますが、最後の計算問題で約50分(線表などのメモ書きを含む、根拠規定も含む)掛けたとしても、残り70分は理論に充てられます。ほとんどがベタ書きの解答なので、70分あれば理論も全て書けると思います。
なお、私は大原ベースの解答をしていたので、ぐるぐるの計算問題については、根拠規定は書きません。その場合は計算問題が約40分掛かりますので、理論に80分使える計算になります。80分あれば理論は十分書けると思います。
本試験なので、普段の解くスピードよりもやや遅くなったり、資料を読んでいる時間が多くなったりすると思いますが、それを考慮しても、近年の消費税法の様に全然時間が足りなかったということにはならないはずです。
今回の本試験で時間不足だった人は、明らかに理論の暗記精度が悪いか、計算の練習不足です。
特に理論の暗記精度が悪い人は、理論を思い出している時間が予想以上に長くなっています。
一度、同じ量の「うる覚えの理論を書いた場合の時間」と「完璧に覚えている理論を書いた場合の時間」をストップウォッチなどで計ってみてください。
その時間の差が「理論を思い出している時間」です。
「理論を思い出している時間」の差だけ、他の受験生(特に上位10%の合格者グループ)の解答スピードで差を付けられています。
計算は計算パターンが完全に頭に入っていないと、スラスラと計算パターンを書けませんし、配点の来そうなコメント(公課劣後、法廷納期限等の日付の説明など)を忘れがちです。線表などのメモ書きの工夫も必要です。
理論と計算問題の両方とも、文字自体を書くスピードなんてどの受験生もあまり変わりませんよ。
本試験中の考える時間は必要ですが、手の止まっている時間(理論を思い出している時間、迷っている時間)は1秒でも削りましょう。(東洋大駅伝のスローガン「その1秒を削り出せ」と同じです。)