ご自身で確定申告をされている方からは、「確定申告書を自分で作成しているが、合っているか不安」という話をよく聞きます。
申告書や決算書を確認する機会がありますが、ざっと見ただけでも疑問に思う箇所はあります。
今回は金額を計算する際の税務上の判断というよりも、パッと見の表面的な指摘事項内容です。
個人事業主の方でご自身で決算書や申告書を作成する方は、作成後に確認して欲しい項目は以下の通りです。
決算書 月別売上と仕入が連動しているか?
決算書とは所得税青色申告決算書のことです。
2ページ目の月別売上と仕入は連動していますか?
売上が上がった月は当然仕入も多くなります。極端に売上だけ上がっている月、仕入だけが上がっている月はありませんか?
発生主義(売上仕入は請求月に計上する)ではなくて、現金主義(売上仕入を現金の入出金月に計上する)した場合、売上と仕入の金額が連動しません。
決算書 雑収入の計上もれはないか?
飲食業などの場合、必ずまかないの雑収入が計上されるはずです。
製造業などの場合、金属スクラップの売却代金が雑収入に計上されるはずです。
数年前でしたら、コロナの持続化給付金など雑収入として計上される給付金がありました。
売上以外の収入について、計上もれはありませんか?
決算書 専従者給与の届出は出しているか?
専従者給与については、「専従者給与科目と通常の給与科目との使い分け方は?」の記事に書いていますが、専従者給与については事前に届出が必要です。
届出を出していないのに、専従者給与を計上していませんか?
また、専従者給与と通常の給与は科目が異なります。区分して書いてください。
決算書 減価償却明細と決算書が連動しているか?
決算書3ページ目の減価償却費の計算欄の「本年分の必要経費算入額」と決算書1ページ目の決算書の減価償却費は同じ金額となります。
申告書ソフトを使っている場合は自動連動するかと思いますが、手計算している場合はズレているケースをよく見かけます。
また、決算書3ページ目の減価償却費の計算欄の未償却残高と、決算書4ページ目の貸借対照表12/31期末の建物や車両運搬具などの各科目の金額は一致します。
決算書 預金や売掛金、未払金の残高は資料と一致しているか?
決算書4ページ目の貸借対照表の12/31期末の金額は、年末時点の各科目の金額です。必ず資料の金額と一致するはずです。
途中で資料と一致していても、その後入力をしていくと、入力間違いなどでいつの間にか資料と残高がズレている場合があります。最後に再度一致しているか?確認してください。
決算書 前年の期末残高と今年の期首残高が一致しているか?
複式簿記による青色申告の場合、決算書4ページ目の貸借対照表を作成します。
必ず前年の期末残高と今年の期首残高が一致します。
本来は一致して当たり前の数字ですので、ズレている場合は要注意です。
決算書 特殊事情を記載しているか?
例えば、病気などで数か月休業していた場合、数か月分の売上がごっそり抜けることになります。
パッと見ると売上の計上がもれているようにも見えてしまいます。
そのような場合は、決算書3ページ目に「本年中における特殊事情」の欄に休業した時期や理由について記載しましょう。
税務署はあなたが病気で休業していたことは知りえません。決算書や申告書の数字に表示できない事柄については、この特殊事情欄に記載しておきましょう。
申告書 決算書の各金額と一致しているか?
基本的には決算書の各金額を申告書へ転記することになりますので、それぞれの金額が一致します。
ところが、追加入力したり、訂正処理をしたりしていると、いつの間にか申告書と決算書の各金額がズレていることがあります。
特に申告書の事業収入の所得金額はそのまま所得税の計算に繋がる重要な数字です。ここが間違っていると、後の税金計算や納税額を全て間違うことになります。
申告書 専従者給与と配偶者特別控除の二重適用はできない
配偶者を専従者として専従者給与を支払っている場合は、配偶者特別控除は適用できません。
扶養家族の場合も同じです。二重に適用はできません。
申告書 第一表と第二表の金額が一致しているか?
確定申告書についても、各金額が連動しています。
第二表は第一表の明細のような内容となっています。
これも、追加入力したり、訂正処理をしたりしていると、いつの間にか第一表と第二表の各金額がズレていることがあります。
申告書 第二表の事業税非課税売上を記載しているか?
保険診療収入などがある業種は、事業税の計算において、非課税売上となる売上があります。
ここを入力するかどうか?で事業税の金額が変わってきます。
該当する業種の方は忘れずに入力してください。
申告書 予定納付額の入力忘れ
所得税の予定納付額の入力忘れ、入力間違いは意外と多いです。
申告書 還付口座の入力忘れ
所得税が申告による還付の場合は、税金が還付されますが、この還付先口座を申告書に入力していないと、税務署からの税金還付の振り込みができません。
還付先を入力し忘れると、税務署が口座の確認する手間がかかり、還付されるのが遅くなります。
まとめ
色々と各項目を説明してきました。全般的に言えることは、やはり各金額の連動がきちっとできているか?ということです。
申告税務ソフトを使用している場合は、ある程度各金額が連動してくれますが、それでも連動していない箇所があります。
年1回しかしない、あるいは今回が初めての申告書の作成といった場合、「どことどこの金額が一致するのか?」までは理解できないかと思います。
申告書や決算書の各金額の連動が取れていないと、税務署や金融機関などから「そもそもの各金額自体が本当に正しい金額なのか?」という印象を持たれます。
国税庁ホームページの確定申告書作成コーナーを活用するのも良いかと思います。
