確定申告期限の3月15日ギリギリまで確定申告業務をしている税理士や税理士事務所は、私の個人的な意見としては、あまりオススメできません。理由は余裕を持って仕事をできていないので、ミスやトラブルが多発する可能性が非常に高いからです。
未だに税理士業界では深夜残業や休日出勤、3/16早朝に税務署ポストへ投函した等々の武勇伝が語られていますが、これは税理士業界の悪い習慣です。
今回は確定申告時期の税理士業界の実態についての簡単な解説と私個人の意見を書こうと思います。
なぜ3/15ギリギリまで仕事をしているのか?
「税理士はなぜ3/15の確定申告期限ギリギリまで仕事をしているのか?」理由は色々とありますが、
①個人の課税期間が暦年(1/1-12/31)と決まっている
②そもそも受託件数が多すぎる(又は事務所職員が不足している)
③報酬料金が安いので件数を増やして売上を確保
④稼ぎ時なので売上を重視する結果、ついつい依頼があれば何でも受託してしまう
ざっと書きましたが、主にこんな感じでしょうか?
結局は①②③④は全てリンクしている問題です。
①は法律で決まっているので、この暦年(1/1-12/31)課税の期間は変えられません。が、事業所得や不動産所得など年間の仕訳数がそれなりにある顧問先については、年1(確定申告のみの関与、普段は一切やり取りがない)の関与から、毎月関与とは言わなくても、数カ月ごとに資料を出してもらうだけでも、確定申告時期の負担は随分と減ります。(あるいは会計ソフトを顧問先へ導入できれば、決算書は確定申告時期の初期には事前に完成することになります。)
ほとんどの税理士や税理士事務所が「確定申告が終わらん!」と言っているのは、この事業所得や不動産所得の申告を確定申告シーズンに集中して処理するのが原因です。そもそもこの時期だけで処理するというのが無理な話なんです。
3/15ギリギリまで仕事をするのは所長税理士の体質?
先のブロックで書いた通り、本来は契約や条件などの見直しをする必要があるのを税理士が放置していると言えます。
で、先に書いた②③④の問題とも繋がりますが、結局は事務所として受ける仕事量を調節できていないという問題に集約されるのではないでしょうか?
売上を確保したいために、安い報酬料金の確定申告の仕事でも受けてしまう。自分の所得(利益)を確保したいがために、職員は極力減らす・・・・所長税理士は夜中でも休日でも好きなだけ仕事すれば良いですが、仕事の裁量権がない職員にも同じことをさせるのは本当にいけないと思います。
もちろん早めに確定申告業務を終わっている先生方もいます。税理士ごとにスタンスが違いがあり、特にこの確定申告時期には、その違いが顕著に表れると思います。
夏休みの宿題と同じで、早めに終わらせる方がいいと考えるのか?それとも、とにかく8/31までに終わればいいんでしょ!と考えるのか?
どちらのスタンスを取る税理士がいいのか?はお客さんによって様々だとは思いますが、冒頭に書いた通り、期限ギリギリでの業務では、ミスやトラブルが多発する可能性が非常に高いです。(税理士業務に限らず当然の話ですね)
その税理士(税理士事務所)の確定申告時期の忙しさを知るための質問とは?
では、毎年の確定申告時期の忙しさを知るためには税理士(税理士事務所)に対してどんな質問をすればいいでしょうか?
①確定申告時期の件数(1人あたりの平均担当件数)
②確定申告シーズン中の勤務時間、休日出勤の有無
③一番忙しい時期はどの辺りか?
④新規の確定申告受付はいつ頃までか?
他にも質問することはあると思いますが、大体こんな感じでしょうか?
①の件数については、一概には言えませんが、私の個人的な感覚で言えば、1人で担当できる件数は50件ぐらいまでが限度では?と考えています。
二か所給与のみでも1件、ボリューム多い事業所得でも1件ですので、多少の誤差はあると思いますが、今年の私の担当件数は約40件でした(税理士会からの無料会場派遣業務中での担当申告件数を含む)。
②とも関連しますが、それを基に考えると50件ぐらいで、定時で上がるのが難しくなってくる件数ではないでしょうか?
入力補助する人の有無、確定申告に着手する時期の早い遅いも影響しますが、担当件数が80件ぐらいなら確実に残業していると思います。100件となれば、深夜残業や休日出勤は確実にしていると思います。100件超は明らかに件数が多過ぎると言えます。
③の忙しい時期を質問すれば、その税理士(税理士事務所)の資料収集能力(顧問先の資料提供能力)がある程度分かります。我々税理士の仕事はお客さんからの資料の提出があって、始めて仕事に着手できます。資料が無ければ何もできません。また不足する資料や追加資料があれば、その間は仕掛中となり、その仕事はストップします。資料収集の早い遅いで仕事の完了日が決まると言っても過言ではありません。
確定申告業務の忙しい時期が1月や2月に集中している事務所は、早めに資料収集して、早期から確定申告業務に着手できている、ある程度期日に余裕を持って申告業務ができていると言えます。
④の新規受付の締切時期についてですが、人気の税理士(税理士事務所)は過年度からのお客さんや前年中の早い時期からの依頼で、既にキャパが埋まっています。ですので、このような税理士は早めに確定申告の新規受付を終了しています。
あるいは、私のようにある程度余裕を持って仕事をしたい税理士も早めに新規受付を締め切ります。私の場合は毎年1月末まで締め切ります。(詳細は過去の記事「確定申告はいつまでに依頼すべき?」をご覧ください。)
もちろん開業間もない税理士や、相当時間に余裕を持っている税理士は2月後半や3月でも新規受付をしている場合もありますが、通常は2月初旬か中旬頃には新規受付を終了する税理士が多いです。
ギリギリまで新規依頼の受付をしている税理士は、先のブロックでも書いた通り、売上に固執しているケースが多いです。売上も大切ですが、ミスやトラブル無く、無事に期限内に仕事を終えるということの方が大切だと私は思います。
X(旧Twitter)内でもこの申告期限間際の時期に、税理士仲間の間で「残業してます」や「あと数十件残っていて、期限までに間に合いそうにない!」のようなツイートで盛り上がって?いますが、私は同業者として少々冷めた目で見ています。
締切間際でテンションが上がっている、追い込まれてしんどい自分に酔っているのだと思いますが、それはこの税理業務で経験する事柄ではないと私は思います。
申告期限内に申告するというのは税理士として最低限の仕事だからです。裏を返せば、申告期限内に申告できない可能性が1%でもある依頼は絶対に受けたらダメという事です。
勤務時代に所長先生から「資料が1つでも足りない仕事は受けたらダメ。他の資料を受け取らずに帰ってこい!」と何度も言われていました。当時はその意味が何となくしか理解できていませんでしたが、今はその意味がよく分かります。仕事を断るのも大切なことです。
私は上記の通り、期限内に申告するという最低限の仕事ができない可能性がある税理士や税理士事務所には、仕事を頼むべきでないという考え方です。と同時に依頼者であるお客さんには、1日でも早く依頼し、資料を早期に税理士側に提出することを望みます。