先日Xに投稿された内容を私がリポストしています。
投稿された内容は、毎日100円ずつ積み立て、20歳の誕生日に通帳プレゼントしたという感動秘話です。記事では10万いいねが付いて良い話題ですね~という話です。
で、一般の方はこのような反応ですが、私たち税理士仲間の反応は少し違います。どの先生も口を揃えて「名義預金、贈与」というワードを出します。私のリポストの通り、結果的には税金が掛からない金額ですが、もう少し金額が大きくなると税金が発生する行為です。(税金発生することを理解したうえでこのような行為をされるのは構いませんが。)
なぜ感動秘話に税金の話が絡んでくるのでしょうか?
息子名義の通帳だが、実質は母の通帳である
元の記事にははっきりと書かれていませんが、恐らく母が当時1歳の息子のために息子名義の口座を開設し、毎日100円ずつ貯金を続けたという話だと思います。
親が子の名義の通帳を作成するというケースはよくあります。それ自体は特に問題ありません。
一般の方がよく勘違いするのが、この場合の通帳は「子の通帳と認識している(所有者は子)」ということです。
通帳には子の名前が記載されてる=子の通帳・・・・ではありません。
税金の世界では形式ではなくて、実質で判断します。
形式上は息子の通帳ですが、実質的には親の通帳(=親の持ち物、財産)ということになります。
預金については、主に次の2点が重要なポイントです。
①預金口座の存在を知っている
②通帳やカードの管理ができ、預金の出し入れが自由にできる
今回のケースでは、預金口座開設時、息子は1歳ですので預金口座の存在すら知りません。その後口座の存在を秘密にしたまま、息子が20歳になっているので、息子は自分名義の預金があることは知らないままでした。
そして、通帳やカードの管理は母がおこなっていたため、息子は預金の出し入れを自由にできません。自分名義の口座であっても、自由に使うことができなかったというわけです。(そもそも預金口座の存在自体を知らないのですから、自由に使えるわけがありませんが。)
ということであれば、この預金口座の真の所有者は??もうお分かりですね?
預金口座の真の所有者母ということになります。
このような預金口座を税金の世界では、「名義預金」と言います。相続の場合は、この預金口座は母の財産と考えます。
ですので、口座開設時に通帳に印字した息子の名前は、税金の世界では一切関係ないということです。
預金通帳とカードをプレゼント=母から子への贈与
この預金通帳を母から息子へ渡したとは明確に書かれていませんが、恐らく息子が20歳になったときに渡したのだと思います。渡すためにコツコツ貯金して、手書きのコメントを残しておいたのだろうと。
さて、前のブロックで書いた通り、この預金口座の真の所有者は母親ですので、この預金通帳とカードを子にプレゼントするということは、この預金通帳の残高を母から子へプレゼント(=贈与)するということになります。
贈与した金額はいくらでしょうか?
1歳の誕生日から~毎日100円ずつと書かれていましたので、私は100円×365日×19年間=693,500円と計算しました(仮に20年間の場合は730,000円)
贈与税については年間110万円までは税金が掛かりませんので、今回の場合は贈与税が発生しませんが、もし、110万円を超えるような預金残高であれば、相続税が発生してしまいます。
別の記事「やってはいけない!実家のリフォーム代の支払い」でも書きましたが、親子間の感動話、よい話に水を差すのが贈与税です。
今回の話題となった「名義預金」については、なかなか一般の方には理解しがたい部分でもありますが、税金の世界ではこのような考え方をしますので、十分に注意してください。