仕事柄、たまに粉飾している決算書や申告書を見かける機会があります。絶対に関わりたくないので、即お断りしています。今回は粉飾決算について私自身が感じることを書きます。
粉飾はほぼ100%分かります
「マジシャンの前で手品をするのは、刑事の前で殺人をするのと同じだ」
これはドラマで聞いた言葉です。要はマジシャンが同業者の前で手品をすれば、絶対にタネがばれてしまうという話です。
何故絶対にタネがばれてしまうかというと、それは同じマジシャンが見ているからです。同じ手品のプロが見ればすぐにタネがばれてしまうということです。
税理士も同じです。
税理士は決算書や申告書をほぼ毎日のように見ています。実際に各書類を作成もしていますので、数字の流れもよく理解しています。
そんな税理士に粉飾した決算書や申告書を渡せば、よほど巧妙な粉飾をしない限り、ほぼ100%分かります。
会計や税金に詳しくない一般の人が粉飾した決算書や申告書は、すぐに分かります。
実際に粉飾した決算書と申告書を見たときの話
随分と前の話ですが、私が実際に粉飾した申告書を見たときの話です。
まだ所属する事務所との顧問契約前に面会した会社の申告書について、過去数年分の決算書と申告書を参考資料として預かりました。
事務所に帰って、その数年分の決算書と申告書を見たときに、別表の各金額が年度をまたいでズレていることに気が付きました。
申告書の中で連動しているはずの各金額がズレていましたし、申告書と決算書の連動しているはずの各金額もズレていました。明らかに辻褄が合っていません。
修正申告をした可能性も考えられましたが、修正申告の控えは見当たりませんでした。粉飾の他にも事務所として顧問契約を結ぶにあたってネックとなる項目が他にもあったので、所長と検討の結果、こちらからお断りする事になりました。
仮に修正申告をしていたとしても、控え資料が無く、修正申告した旨の話も聞いていません。こちらから数字がおかしいと言ってきたら、修正申告の資料を出すつもりだったのでしょうか?
そうであれば、尚更顧問契約はこちらからお断りです。私たち税理士事務所は顧客から提出してもらう資料を基に仕事をしています。提出資料が欠けていたり、間違った資料を受けとってしまうと、いくら頑張って仕事をしても、それは間違った処理をしていることになります。こんな虚しいことはありません。
正直に過去に粉飾してたと言ってくれたら、また違った対応をしていたかもしれませんが。
一度粉飾すると粉飾し続けることになる
粉飾決算をすると簡単には元の状態には戻せません。
先程のブロックでも書きましたが、決算書や申告書の各金額は複雑に連動して繋がっています。
そして、年度ごとにも同じく連動して繋がっています。たった一箇所の金額を変更しただけでも、かなりの箇所の金額が連動して動きます。
決算書や申告書は前年以前の金額を基礎に計算しますので、粉飾年度の翌年以降は粉飾した金額をベースにせざるを得ません。そうなると、粉飾の金額の上に更に粉飾をすることとなり、もう元の状態には戻せなくなります。
粉飾する理由として、融資を断られると資金ショートするからというケースが多い思います。
ですが、翌年以降に良い見通しが立たない状態で、今さえ乗り越えたら何とかなると言う程、会社の経営は甘くないです。
何故粉飾しないといけないぐらいに財務状態が悪化するまで何も手を付けなかったのか? と思います。
現状でどんな対策が打てるのか?売上の回復、経費の削減、資産売却による資金確保、借入の返済猶予申請など‥打てる限りの手は打って下さい。
粉飾は禁じ手です。
勿論脱税もダメです、犯罪です。