先日、令和3年10月1日からインボイス登録申請の受付が開始されました。
インボイス制度導入により一番大きな影響を受けるのが現行制度の免税事業者(消費税を納めなくていい個人事業者や会社)です。
今回はインボイス制度導入により、免税事業者が課税事業者となった方がいいのか簡単な具体例を通じて説明したいと思います。
免税事業者がインボイス導入により大きな影響を受けるという話は、以前のブログ「免税事業者の益税ついて」を読んでください。
2023年10月19日追記、現在2割特例という制度が設けられています。一般的にはこの2割制度を適用した方が納税者有利となるケースが多いです。ただし経過措置であることなど数年後の納付消費税額を考えると、一概に課税事業者となってこの2割特例を適用したほうがいいとも言い切れないケースもありますので、詳しくはお近くの税理士などにご相談ください。
インボイス登録申請期間と課税期間について
インボイス制度は令和5年10月1日からスタートします。今(令和3年10月)から2年後です。
そして、インボイス登録申請期間は、令和3年10月1日 から 令和5年3月31日までです。(例外で令和5年9月30日まで)
免税事業者がインボイス登録により、令和5年10月1日から課税事業者となれば、
個人事業者は令和5年については、1月1日から9月30日は免税事業者、10月1日から12月31日までは課税事業者となります。令和6年以降は12カ月間ずっと課税事業者となります。
法人(会社)は、たとえば3月決算会社の場合、令和5年4月1日から令和5年9月30までは免税事業者、令和5年10月1日から令和6年3月31日までが課税事業者となります。個人と同じく翌期の令和6年4月1日以降はずっと課税事業者となります。
令和5年10月1日を含む年度のみ、免税期間と課税期間の両方が存在することとなります。課税期間の取引については、消費税申告書を作成して税務署へ申告、消費税を納付します。
インボイス制度での免税事業者と課税事業者の比較
免税事業者がインボイス導入により益税の恩恵を受けられなくなるという話は、以前のブログ「免税事業者の益税ついて」にも書いた通りですが、今回はインボイス制度導入により、免税事業者は課税事業者となった方がいいのか? あるいは、そのまま免税事業者のままの方がいいのか? という話です。
今回は、簡単な具体性を基にインボイス制度導入後、免税事業者と課税事業者のそれぞれの利益(手許に残るお金)の金額を比較します。(インボイス導入後の免税事業者の問題点については、後日機会があれば書こうとおもいます。)
一年間の取引が440万円(税込)の商品を仕入して、その商品を550万円(税込)で売っただけとします。
比較しやすくするため、消費税の経理方式は税込方式とします。(税抜方式も税込方式も消費税や利益の計算結果は同じになります。)
インボイス導入前で免税事業者の場合だと
売上550万円 - 仕入440万円 = 利益110万円 となります。
インボイス導入後、免税事業者のまま(課税事業者とならない)だと、売上に消費税(50万円分)を上乗せして請求することができませんので、売上は500万円に減ります。
一方仕入については、消費税を含めた金額で仕入れるので440万円のままです。
そうすると利益は、
売上500万円 - 仕入440万円 = 利益60万円 となります。
次にインボイス導入後、課税事業者となった場合
売上に消費税を上乗せして請求することができます。仕入れは消費税を含めた金額で仕入れます。
売上550万円 ー 仕入440万円 ー消費税10万円 = 利益100万円となります。
(預かり消費税50万円ー仮払消費税40万円=消費税納付金額10万円)
令和5年10月以降のインボイス導入後は免税事業者のままの利益(60万円)より、課税事業者となった場合の利益(100万円)の方が多くなります。
インボイス制度導入後は、消費税の納付義務が生じても売上に消費税を上乗せ請求できる課税事業者の方が、免税事業者よりも有利となります。
では、インボイス制度導入時に簡易課税を選択した場合はどうでしょうか?
簡易課税制度は売上に業種ごとの割合を掛けて、仕入の消費税額を計算する方式です。2年前の課税売上が5,000万円以下で簡易課税の選択届出などの一定要件を満たしている場合に、簡易課税制度を適用できます。
具体例の業種を第二種(小売店)とすると、売上550万円であれば、消費税は10万円となります。
(簡便的な計算をすると、預かり消費税50万円ー50万円×みなし仕入れ率80%=納付消費税額10万円)
具体例の業種について、第一種の卸売業では消費税は5万円、第三種の製造業では消費税は15万円、第五種のサービス業では消費税は25万円となります。
整理すると、以下の通りとなります。
インボイス制度導入後
免税事業者のまま 売上500万円-仕入440万円=利益60万円
課税事業者 原則 売上550万円ー仕入440万円ー消費税10万円=利益100万円
課税事業者 簡易課税
第一種卸売業 売上550万円ー仕入440万円ー消費税5万円=利益105万円
第二種小売業 売上550万円ー仕入440万円ー消費税10万円=利益100万円
第三種製造業 売上550万円ー仕入440万円ー消費税15万円=利益95万円
第五種サービス業 売上550万円ー仕入440万円ー消費税25万円=利益85万円
具体例の場合、卸売業であれば簡易課税を選択するのが有利です。小売業は原則と簡易課税のどちらを選んでも同じ、製造業やサービス業は原則を選択するのが有利となります。
※簡易課税の選択については、一度適用すると2年間は変更できないなど、注意しなければならない点があります。設備投資や事業内容について翌期以降の事業計画を十分に検討したうえで、簡易課税の選択してください。
インボイス導入後、免税事業者のままが最も不利
ここで、注目すべき点は、あらゆる選択肢の中で、インボイス導入後も「免税事業者のまま」を選択する場合が、利益の金額が一番少なくなってしまうということです。
今回は簡単な具体例を用いて免税事業者、課税事業者(原則課税)、課税事業者(簡易課税の各業種)を比較しました。
インボイス導入前の現時点で免税事業者の方は、決算書などの実際の数字を使って、これらの金額の比較をして、どの方法を選択すれば最も有利となるのか? を顧問税理士に確認してください。
税理士と顧問契約されていない方で、ご自身で比較計算が出来ないという場合は、竹岡税理士事務所までお問い合わせください。