取引先が1社の場合は自社に価格決定権がありません。必ず相手の言い値に従わざるを得ません。
私の師匠も「取引先が一社の事業形態は事業ではない。雇用契約のない従業員と同じ」と言い切っています。少し厳しい意見ですが、私も同じ意見です。非常に事業形態として危険な状態ということです。
今回は価格決定権について私なりに思うところを書きます。
顧問先が1社だけの税理士事務所を見たことがありますか?
顧問先が1社だけという税理士事務所を見たことがありますか?
・・・無いですよね(開業直後などの特殊なケースは除く)。顧問先が1件のみ、年間顧問料が1,000万円・・・・実質は経理部長と同じです。顧問先2社で500万円ずつの顧問料はどうでしょうか?・・・・まだまだ危険な状態です。(一般的に顧問料金が高い=作業内容が増える、相談内容が複雑→1社にかかる時間と手間が増えます。)
顧問先5社で200万ずつでは?・・・少し落ち着いてきましたが、1社解約となると売上の20%減となるので、やや不安定な状態です。顧問先10社で100万円ずつ・・・このくらいになれば、ようやく安定してきます。1社解約となっても売上は10%減で済みます。
税理士の中には、自分の顧問先が大会社で顧問料数百万円です!と自慢される方がいます。よほどの大事務所でない限り、顧問料数百万というのは前述した危険性が高い状態です。
私から見れば「私はリスク管理ができていません」と自ら言っているのと同じです。
取引先1社の場合はどうしたらいいのか?
現在取引先が1社だけの会社は、少しキツい言い方をすれば、「今までラッキーだっただけ」です。今後どうなるかは分かりません。自分の事業の運命が取引先にゆだねられている状態=極めて危険です。
では取引先1社の場合はどうしたらいいのか?当たり前の話ですが、取引先を増やすしかありません。
既に1社だけの仕事がパンパンに入っているのであれば、2社目以降の注文が来ても対応できませんので、最初の1社の仕事量を先に減らす必要があります。ということは一時的に売上が減少するということです。最初から複数の取引先があれば、このようなことは起こりません。取引先を1社だけにしてしまったのが原因です。
まずは取引先1社→2社の状態へ。2社になったら、3社4社と少しずつ増やしていく。同じく仕事量の調整は避けて通れません。売上が下がる時期も続くと思います。
とここまで書けば、大半の取引先1社の社長は「そんなに売上が下がる時期が続くなら、取引先を増やすのは怖い、今の状態でいい。」と言います。
・・・・繰り返し聞きますが、顧問先1社の税理士事務所を聞いたことがありますか??
売上減少よりも取引先1社のリスクの方が断然高いです。
価格決定権があれば強気に交渉できる
私も1人で小さな事務所を経営しているわけですが、顧問契約などの面談時に値引き要求されることが残念ながらあります。少し前にも値引きの話が出ましたが、「今まで作業した分の報酬は要りませんから、今すぐに資料をお返しします。」と言って、帰る支度をしました。
すると相手は慌てて値引きの話を引っ込めました。私の報酬労金はこの事務所HPに掲載しています。料金は同業者の平均報酬よりもやや低めに設定しています。その代わりに値引きは一切応じませんというスタンスです。(会計自計化など合理的な理由によるこちら側からの値引き提案はします。)
昔の勤務時代に「担当する会社から値引き要求されたら、突っぱねろ!絶対に受けるな!ケンカして帰ってこい!」と言われていました。(その後、その要求に対してのフォローは幹部と連携して実施する。)
取引先1社ではこの突っぱねる!ができません。突っぱねてケンカして、「じゃー結構です。来月から取引無しで」と言われたら、来月からは売上ゼロですから。値下げ要求を受け入れざるを得ません。
取引先の件数を少しでも増やして、価格決定権を自社が持つ、値引き交渉でケンカできる体制を整えましょう。