夫の小遣い制度の是非についての議論を見かけますが、相続税の側面から見ると小遣い制度に反対!というのが私の意見です。なぜなら名義預金の問題が発生するからです。
名義預金というのは、口座の名義人と実際の持ち主が異なる預金のことです。
なぜ夫の小遣い制度が相続税の名義預金の問題に繋がるのでしょうか?
なお、前提として夫が会社員、妻が専業主婦の場合とします。
夫の稼いだお金は夫の財産
民法上、婚姻中に取得した財産は夫婦共有の財産とされますが、夫が死亡し相続が発生した場合、夫が稼いできたお金は夫の財産として相続税を計算します。
ですので、夫の稼いだお金は通常であれば夫名義の預金口座へ貯まっていきますので、その口座の死亡時の残高を相続財産として計算すればいいわけです。
ところが、給与振り込みされた口座から、一旦給与支給額の全額を妻の口座へ資金移動し、そこから生活費を支払い、夫へはお小遣いを渡す・・・・このような場合だと給与支給額と生活費などの差額は「妻の口座」に貯まることとなります。
でその後、夫が死亡し相続が発生するのですが、その貯まった妻の預金口座の残高は夫の財産です。つまりこの妻の口座が、夫の名義預金として相続税の計算で他の財産と合わせて財産として計上します。
中には「少ない夫の給与の中からやりくりして貯金したお金は、私(妻)のものだ!」と主張される奥様もいますが、前提として妻が専業主婦であれば、このお家に入ってくる収入は全て夫が稼いできたお金ですので、妻の財産が増えるというはありません。
名義は必ず出資者に合わせる
車などでも同じことが言えます。例えば、妻が買い物で使う車なので、車を妻名義で購入する(支払は夫から)のもおかしいです。夫のお金で買う車は夫の名義になるのが当然です。(夫が車代金を妻に贈与したという扱いになり、贈与税の問題になります。)
この様に書くと、また「私(妻)がいつも乗る車だから、私名義にしたい!」と主張する方もいるかもしれません。
ですが、それは夫名義の車をいつも妻が使っている、その状態で何の問題もありませんから。
先ほどの預金口座の話と同じで、相続発生時には、この妻名義の車も夫の財産として計算します。
預金も車も財産の名義は必ず出資者(お金の出どころの人)に合わせてください。
相続相談でお家の生活費や資金管理状況などプライベートな部分を色々質問するのは、このような名義預金の問題があるからです。
「専業主婦の私だって家事育児を頑張って、家の財産形成に貢献してるんだから、私の財産も欲しい!」と怒る方がいますが、それは家庭の中の問題です。ご主人に何か買ってもらう、お小遣いをもらう等々で対応してくださいという話です。
小遣い制度にするなら、全て夫の口座の中で妻が管理してくださいということです。
(私がお金に関する仕事をしていることもあり)個人的には私自身が小遣い制にされたら、めっちゃ嫌・・・・というか、そもそも小遣い制にはさせないですけどね。(決して好き勝手に使ってないですけどね。ほんのちょっとだけは好きに使ってますけどね。それぐらいの楽しみはええでしょ。)