PayPal(ペイパル)を通した売上の入金の処理を、全て入金日レートで処理したら?という質問を受けました。結果は利益の所得金額に大きな影響は出ません。(決して入金日レート処理が正しい訳ではありませんので、誤解の無いようにしてください。)今回はペイパルを通した売上の入金処理について書こうと思います。
原則は為替差損益を認識する
インタネット上での売買について、ペイパルのような電子決算が導入されている取引が多いですが、このペイパルは日本円ではない外貨のやり取りというところが、会計処理を複雑にしている原因です。日本では会計処理は円単位で処理しますが、そこに違う単位の外貨であるドルやユーロが入ってくるので、毎回円に換算する作業が増えます。
まず取引日ごとのレート換算する処理を確認します。
100ドルの売上(レートは取引日が140円、決済日が150円とします)
取引日の仕訳は 売掛金14,000 / 売上 14,000
決済日の仕訳は 預金15,000 / 売掛金 14,000
/ 為替差損益 1,000
為替差損益というのは、レートの変動による損益です。決済日レートが取引日レートよりも10円上がっていることによる得した部分を示しています。(逆に決済日レートが取引日レートよりも下がった場合は損した部分を表示します。)
で、1年間の取引がこの1取引だったとすると、年間の儲け(利益)は売上14,000+為替差(損)益1,000=15,000となります。
今回は取引が1回だけでしたが、通常は何度も取引があるので、その都度レートの変動による為替差損益を認識するのは、なかなかの手間になります。
仮に入金日レートで売上を計上したら?
上記のように原則的に毎回レートの変動を処理せずに、入金日レートで売上を計上したらどうなるでしょうか?
同じく100ドルの売上(レートは取引日が140円、決済日が150円とします)
取引日は処理なし
決済日 預金 15,000 / 売上 15,000
で、同じく1年間の取引がこの1取引だったとすると、年間の儲け(利益)は売上15,000となります。(レート変動による為替差損益の認識は無し)
・・・・ん?利益が15,000円??・・・さっきの原則と同じ利益では??
そういうことです。原則処理ではレート変動による損得を売上とは区別して認識しましたが、最終の儲け(利益、所得)の金額は同じになります。
簡便的に入金日に売上処理しても、利益計算(所得計算)においては、原則処理と大きな差が出ないということです。(冒頭でも書きましたが、決して簡便的な処理が正しいという訳ではありませんので。)
決算日のペイパル残高に注意!
入金日のレートで売上を上げる簡便的な方法は、入金日ベースで売上を認識しますので、毎月の正確な売上の把握ができません。特に個人の所得税確定申告書や会社の法人税確定申告書には毎月の売上を記載する明細がありますので、厳密に言えば、入金日ベースで集計した毎月の売上金額は正しい数字ではなくなってしまいます。消費税の計算にも影響が出ます。
そして、特に注意が必要なのは、年度末の取引です。
取引日が今期年度末、決済日が翌期の取引については、入金日ベースで売上を認識していると、この取引については、今期ではなくて翌期の売上として処理されてしまいます。
ですので、年度末に未決済の売掛金(=ペイパル残高)については、全て売上計上する必要があります。(レートは年度末のレートで)
特に税理士や税務署は売上の計上時期のズレに着目します。翌期に計上されてたら別にいいのでは?というわけではありません。
近年、取引の形態がどんどん複雑になってきていますが、税金の世界での売上を上げる基準日というのは、従来からの引渡基準のままです。引渡基準といっても、結局のところは取引ごとに「どの時点が引渡した日か?」ということを考える必要がありますが。
繰り返しになりますが、決して入金日売上計上処理が正しいという訳ではありませんので、くれぐれも誤解の無いようにお願いいたします。(売上全体の金額に対してレート変動による為替差損益の割合は??と考えると、わざわざレート変動の為替差損益と売上を分ける効果が果たしてどれほどなのか?入金日売上計上処理は正しくないけど、原則の処理から大きく金額がズレてる訳ではないという趣旨の記事ということをご理解ください。)