仕事や書籍で色々な取引を見ていると「どうしてそんな取引形態になってるの?」とツッコミたくなる取引事例があります。そのような取引形態を取った理由はさまざまですが、結局税法の世界では、その取引形態を取ることで思わぬ税務リスクが発生することが少なくありません。今回はそのうような取引事例の問題を一つ書こうと思います。
親名義のビルの家賃収入の振込先を子供の口座にしている
見出しのままですが、「親が所有している親名義のビルの家賃収入の振込先を子供の口座にしている」というケースがあります。
資産家なら子供へのおこずかいとして月に10~20万円ぐらいは渡すので、そのおこずかいとしてこのビルの家賃は直接子供の口座に振り込みをしているというイメージです。
税理士事務所業界の方ならこの危険性はすぐに気付くと思いますが、一般の方は「何か問題があるの?」という感想をお持ちの方がほとんどではないでしょうか?
家賃収入相当額が子供への贈与に該当する
結論としては、その家賃収入の金額相当額が親から子への贈与の対象となります。
お金の流れは直接家賃収入が子供の口座へ振り込まれていますが、税法では、まず家賃収入が一旦親の口座に入金した後に、すぐに親から子へ資金の贈与が行われていると考えます。
毎月10~20万円ですので、年間にすると120~240万円です。贈与税の基礎控除額110万円を超えています。
仮に毎月の振込額が20万円だとすると贈与税は
(240万円-基礎控除額110万円)×10%=13万円です。
この取引を何年も継続していれば、毎年贈与税が13万円発生するということです。数年分を合わせると結構な税額です。
財産から生じる収益の帰属はその財産の所有者である
税法の世界では所得の帰属「その収入は誰のもの?」が問題となります。今回のケースでは、家賃収入は、家賃収入が発生する原因となる財産(ビル)を所有する親に帰属します。親がビルを所有しているからこそ、家賃収入が発生します。ビルを持っていない子供には家賃収入は発生しません。
本来の名義人と実際の名義人が一致していなければ、様々な税務上の問題が発生します。
冒頭のタイトルでも書きましたが、「普通そんな取引しないでしょ?」という取引をすると、大体は税務上の問題が発生します。
「どうせ、この家賃分は子供に渡すから、毎回振込が面倒なので、直接家賃が振り込まれるように家賃受取口座は子供の口座にしておこう」という安易な考えが、結果として贈与税を発生させてしまうというケースでした。
皆さんの身の回りでもちょっと面倒だから本来は○○だけど、△△で処理している、取引しているというケースはありませんか?