毎年この時期に税理士職業賠償責任保険のパンフレットが送られてくるので、その事故事例を読みます。我々税理士事務所で仕事をする者にとっては、背筋が凍るような事故事例ばかりです。今日は税理士職業賠償保険について書こうと思います。
税理士職業賠償責任保険とは?
税理士職業賠償責任保険とは、税理士が税理士業務において損害賠償請求された場合に使える保険です。
自動車保険などと同じです。税理士業務中の事故により顧問先に訴えられたときに使う保険です。
税理士は税務の専門家という位置づけなので、税務に関してはミスがあってはならないという立場です。ですが、何らかの不注意や見落としにより事故が起こる可能性はゼロではありません。
万が一の事故に備えて加入するのが、この税理士職業賠償責任保険です。
税理士職業賠償責任保険の事故事例
近年は消費税の事故件数が増加しているようです。特に多いのが各種届出の提出の失念や適用制度の選択誤りです。
簡易届出を提出したと思っていたら、実は提出していなかった。
簡易不適用届出を提出したと思っていたら、実は提出していなかった。
勘違いと言えば確かに勘違いですが、ケースによっては数百万円の納税額に差が出てくる恐ろしい勘違いです。
届出有無のチェックは税額計算前の前提条件確認
前年に電子申告をしていれば、税務署からの申告のお知らせで本則課税か簡易課税の確認はできます。
電子申告以前の届出の可能性があったり、手許の資料では届出有無の判断がつかない場合、直接税務署に問い合わせるのも一つの方法です。(実際に何度か税務署に問い合わせたことがあります。)
「去年が原則課税だから、今年も原則課税で処理すればいいや」
「去年が簡易課税だから、今年も簡易課税で処理すればいいや」
が一番危険です。
消費税以外の事故事例でも思い込みや勘違いが原因であった事例が沢山ありました。
申告処理では税額計算の金額の方が気になりがちになりますが、そもそもの計算方法(消費税であれば、本則課税か簡易課税)が間違っていれば、後の税額計算は全て間違っている方法で計算しているということになります。
普段から届出有無などの確認は必ずしていますが、改めて注意しないといけないと思いました。
税理士職業賠償責任保険の加入状況について
この税理士職業賠償責任保険は税理士資格を有しないと加入できません。ということは、いわゆるニセ税理士は当然加入してません。
ニセ税理士は無保険の状態で税務に関する仕事を引き受けていることになります。
無免許、無保険で車の運転をしているのと同じ状態です。事故が起きたら彼らはどうするのでしょうか?
では、税理士なら全員入っているのか? と言えば、実際には加入率は65%です。(令和3年近畿税理士会業務対策部資料より)
なかなかの加入率の低さです。加入していない税理士の活動状況などの詳細が分かりませんが、税理士であっても35%が業務に関わる保険に加入していないというのは、少し驚きです。
ニセ税理士と同じく、無保険の税理士が損害賠償を起こされたら、一体どうするのでしょうかね?